ADAS(先進運転支援システム)が生み出す未来:完全自動運転や新たなビジネスモデルの実現

ADASとは、自動車の安全性と快適性を飛躍的に高める先進運転支援システムです。近年、自動運転技術への注目が高まる中、その中核を担うADASの進化は目覚ましいものがあります。カメラやレーダー、LiDARなどのセンサー技術と人工知能の融合により、事故防止から運転負荷軽減まで、ドライバーをさまざまな側面からサポートする技術として急速に普及しています。本記事では、ADASの基本概念から最新の技術動向、さらには将来展望まで、包括的に解説していきます。

 

ADASとは

先進運転支援システム(ADAS)は、センサー、カメラ、レーダーなどの技術を駆使して運転者の安全をサポートする自動車技術の総称です。主に衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)、レーンキープアシスト(LKA)、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などの機能を通じて、事故リスクを低減し、運転の快適性を向上させます。現代の車両では標準装備となりつつあり、交通安全の中核を担っています。

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ADASADの違い

ADASと自動運転(AD)は密接に関連していますが、その役割と責任分担に明確な違いがあります。ADASは運転者を「支援」するシステムであり、最終的な運転責任は常に人間側にあります。システムが危険を検知して警告を発したり、一時的に操作を補助したりしますが、運転者は常に注意を払い、必要に応じて介入する必要があります。

一方、自動運転(AD)はシステムが運転タスクを主導的に実行します。特にレベル3以上の自動運転では、特定条件下でドライバーは運転から解放され、システムが運転責任を担います。現在のADAS技術は自動運転レベル13に相当し、将来的な完全自動運転(レベル45)への過渡期として位置づけられています。この違いは技術的側面だけでなく、法規制や保険、倫理的枠組みにも大きな影響を与えています。

自動運転について詳しくは「【最新動向】自動運転技術におけるAI活用の現状と今後の展望を詳しく解説」をご覧ください。

レベル 概要
レベル0 自動運転システムなし
レベル1 自動ブレーキや前の車について走る(ACC)、車線からはみ出さない(LKAS)など、システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施している
レベル2 レベル1の組み合わせ(ACC+LKAS)や、加減速、分合流を自動で行うなど
レベル3 条件付き自動運転。自動運転システムが基本的に運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対して適切なドライバーの対応が必要
レベル4 特定条件下における完全自動運転
レベル5 完全自動運転

参考:自動運転のレベル分けについて|国土交通省

 

ADASを構成する主要機能

ADASは事故防止や運転負荷の軽減を目的として、人間の「認知」「判断」「操作」という運転プロセスを効果的に支援しています。主要機能をそれぞれ見ていきましょう。

ACC:車間距離制御装置

アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)は、高速道路や長距離運転において特に役立つ機能です。ドライバーが設定した速度を維持しながら、前方を走行する車両との距離を自動的に調整します。先行車両が減速すれば自車も速度を落とし、先行車両が加速すれば設定速度の範囲内で追従します。センサーとレーダー技術を駆使することで交通の流れに合わせた走行が可能となり、アクセルペダルを継続的に操作する必要がなくなるため、長時間運転での疲労軽減に貢献します。最新のシステムでは、渋滞時の発進・停止もサポートするものもあります。

AEBS:衝突被害軽減ブレーキ

衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)は、前方の車両や歩行者、障害物との衝突危険を検知すると、自動的にブレーキを作動させるシステムです。まず警告を発し、ドライバーの反応がない場合は軽いブレーキを、さらに危険が迫れば強いブレーキをかけることで、衝突を回避するか、少なくとも被害を軽減します。近年は多くの国で新車への搭載が義務化されつつあり、交通事故削減に大きく貢献している機能として注目されています。

AFS:自動ヘッドランプ光軸調整

自動ヘッドランプ光軸調整(AFS)は、夜間や悪天候時の視界を最適化するシステムです。車両の速度やステアリングの操作角度、傾斜などに応じてヘッドライトの照射方向や範囲を自動的に調整します。例えば、カーブを曲がる際には進行方向を照らすように光軸が変化し、交差点では広い範囲を照らすよう配光パターンを変えます。また、対向車や先行車に対する眩惑防止機能を備えたシステムもあり、自車の視界確保と同時に他のドライバーへの配慮も実現します。これにより、夜間走行時の安全性が大幅に向上しています。

APA:高度駐車アシスト

高度駐車アシスト(APA)は、駐車操作をドライバーに代わって行うシステムです。センサーやカメラを使用して駐車スペースを検知し、適切な駐車ルートを計算した上で、ステアリング操作を自動的に行います。縦列駐車や垂直駐車など複数の駐車パターンに対応しており、狭いスペースへの駐車や複雑な操作を要する場面でドライバーの負担を大幅に軽減します。スマートフォンとの連携により、車外から駐車操作を行えるシステムも登場しています。

BSM:死角モニタリング

死角モニタリング(BSM)は、ドライバーから直接見えない車両周囲の「死角」エリアを監視するシステムです。主に側方や後方からの接近車両を検知し、ディスプレイ表示、警告音、LEDの点灯などでドライバーに知らせます。これにより、車線変更や合流時などの事故リスクを大幅に低減します。特に高速道路での追い越しや、複数車線の道路での安全確認をサポートします。

DM:ドライバーモニタリング

ドライバーモニタリング(DM)は、車内に設置されたカメラやセンサーを用いてドライバーの状態を継続的に監視するシステムです。顔の向きや目の開閉状態、頭部の動きなどから居眠りや脇見運転、注意散漫な状態を検知すると、警告音や振動で注意を促します。長時間の運転による疲労や、スマートフォン操作などによる「ながら運転」の危険性を軽減する重要な機能です。今後はドライバーの顔認識機能を活用して、シートポジションやミラー角度、空調設定などを自動調整するパーソナライズ機能を備えるものも期待されています。

FCW:前方衝突警告

前方衝突警告(FCW)は、先行車両との衝突の危険性を検知し、ドライバーに警告を発するシステムです。カメラやレーダーを用いて前方の状況を常に監視し、車間距離や相対速度から衝突の可能性を計算します。危険を検知すると、警告音やディスプレイ表示、シートやハンドルの振動などでドライバーに迅速な対応を促します。衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)と連携して動作することが多く、警告後もドライバーの反応がない場合は自動ブレーキが作動するシステムが一般的です。交通事故防止の最前線として重要な役割を果たしています。

LDW:車線逸脱警報

車線逸脱警報(LDW)は、車両が意図せず走行車線からはみ出そうになった際に、ドライバーに警告を発するシステムです。専用カメラで車線マーカーを常時認識し、ウインカーを出さずに車線を越える動きを検知すると、警告音や振動、ディスプレイ表示などで注意を促します。高速道路での長時間運転による集中力低下や、一瞬の脇見による車線逸脱のリスクを軽減し、正面衝突や単独事故防止に貢献します。

LKAS:車線逸脱防止支援システム

車線逸脱防止支援システム(LKAS)は、LDWの機能を拡張し、警告だけでなく実際の運転操作にも介入するシステムです。カメラで車線を検知し、車両が車線中央を維持するよう自動的にステアリングすることで、高速道路や長距離運転時の疲労軽減に大きく貢献します。

NV/PD:ナイトビジョン/歩行者検知

ナイトビジョン/歩行者検知(NV/PD)は、夜間や霧、悪天候などの視界不良時に、通常のヘッドライトでは見えにくい障害物や歩行者を検知するシステムです。赤外線カメラを使用して人や動物の熱源を識別し、専用ディスプレイに表示します。夜間の歩行者関連事故防止に特に効果を発揮します。

RCTA:後退時車両検知警報

後退時車両検知警報(RCTA)は、駐車場からバックで入出庫する際など、視界が制限された状況で側方から接近する車両を検知し、ドライバーに警告するシステムです。専用センサーが両サイドから近づく車両や自転車、歩行者などを感知し、警告音やディスプレイ表示などで知らせます。駐車場など見通しの悪い場所での後退時に特に有効で、ドライバーの死角となる横方向からの接近物を早期に検知することで、衝突事故を未然に防ぎます。

TSR:道路標識認識

道路標識認識(TSR)は、専用カメラを使用して道路標識を自動的に認識し、ドライバーに情報を提供するシステムです。速度制限、一時停止、追い越し禁止などの主要な交通標識を識別し、車内パネルやディスプレイに表示します。特に速度制限標識を認識した場合、現在の走行速度が制限を超えているとアラートを発し、注意を促します。今後はカメラだけでなく、さまざまなデータの収集から精度向上を目指しています。

 

ADASの今後の展望

先進運転支援システム(ADAS)は現在、急速な進化を遂げており、各自動車メーカーや技術企業が競って開発を進めています。これらの技術は単に安全性を高めるだけでなく、移動の概念そのものを根本から変えつつあります。今後数年から数十年の間に、ADASはより高度なレベルへと発展し、私たちの交通システムや社会のあり方に大きな変革をもたらすことが予想されます。

完全自動運転への移行

ADASの進化は、現在のレベル2からレベル3、そして最終的には人間の介入を必要としないレベル4やレベル5の完全自動運転へと向かっています。この移行過程では技術的課題だけでなく、法規制や社会受容性の問題も克服する必要があります。

現在のレベル2技術では高速道路など限定された環境での部分的な自動化が実現していますが、今後は一般道や複雑な都市環境、悪天候下での走行など、より困難な条件下でも対応できるシステムへと発展していくでしょう。そのために各国政府は自動運転車の公道走行テストを許可するなど規制緩和を進めており、自動車メーカーと技術企業は実証実験を重ねながら、安全性と信頼性の向上に取り組んでいます。

完全自動運転の実現により、交通事故の大幅な減少、渋滞の緩和、高齢者や障害者の移動の自由の拡大など、多くの社会的メリットがもたらされると期待されています。

さらなる高度なAI技術やセンサー技術

ADASの発展には、人工知能(AI)とセンサー技術の革新が不可欠です。深層学習や強化学習などの先進的AI技術により、システムは複雑な交通環境においても正確な状況認識と予測が可能になりつつあります。今後は、人間のドライバーのように直感的に周囲の状況を理解し、他の道路利用者の意図を予測できるAIの開発が進むでしょう。

センサー技術においては、より小型で高性能、かつ低コストLiDARやレーダー、カメラの開発が進んでいます。また、異なる種類のセンサーデータを統合するセンサーフュージョン技術も高度化し、霧や雨、雪などの悪条件下でも安定した環境認識が可能になりつつあります。さらに、5Gなどの次世代通信技術を活用したV2XVehicle-to-Everything)通信により、車両同士や交通インフラとの情報共有が進み、見通しの悪い交差点などでも安全な走行が可能になると期待されています。

新たなビジネスモデルの創出

ADASと自動運転技術の進展は、交通・運輸分野に革命をもたらし、全く新しいビジネスモデルを生み出す可能性を秘めています。特に注目されているのが、自動運転タクシーや配車サービス(ロボタクシー)の実用化です。人件費の削減により運賃が大幅に下がれば、マイカー所有の必要性が低下し、MaaSという新たな移動の形態が普及するでしょう。また、自動運転技術を活用した配送ロボットや自動配送車両は、Eコマースの急成長に伴う「ラストワンマイル」の配送効率化に大きく貢献します。中でも人手不足が深刻な物流業界において、自動運転トラックの導入は長距離輸送の効率化とコスト削減をもたらすと期待されています。

ほかにも自動運転車内での過ごし方も変わり、移動時間は仕事や娯楽に充てられるようになるため、車内エンターテイメントや車内オフィス環境に関連する新たなサービスやコンテンツビジネスが生まれるでしょう。さらに、自動運転車から収集される膨大なデータは、交通最適化、都市計画、インフラ管理など多岐にわたる分野で価値を生み出し、データ活用型の新ビジネスが創出されることも予想されています。

モビリティサービスについて詳しくは「モビリティサービスの展望:持続可能な移動社会の実現」をご覧ください。

 

進化し続けるADAS技術が切り拓く新たな自動車産業の未来

ADASは単なる運転支援技術から、自動車産業の未来を根本から変える革新的技術へと進化しています。カメラやレーダー、AIなどの技術融合により、事故防止や運転負荷軽減といった社会的価値を創出し、高齢ドライバーの安全確保や交通事故削減に大きく貢献しています。今後はさらに高度な自律走行機能の実現へと発展し、自動車メーカーだけでなく、半導体、センサー、ソフトウェア企業など多様な業界にビジネスチャンスをもたらすでしょう。このようにADASの進化は、モビリティサービスの多様化や交通システム全体の再構築へとつながり、より安全で効率的な移動社会の実現に不可欠な存在となっているのです。

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