グリーンソフトウェアとは?ソフトウェアのグリーン化に向けたMSEの取り組みをご紹介

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、IT業界でも環境負荷低減への取り組みが加速しています。中でも「グリーンソフトウェア」と呼ばれる、設計から実装、運用に至るまで環境への影響を最小限に抑えることを目指したソフトウェアが今注目されています。本記事では、グリーンソフトウェアの背景と取り組むメリット、そしてその実践方法やNTTデータMSEが行っている取り組みなどについて詳しく解説します。

 

グリーンソフトウェアとは

グリーンソフトウェアとは、環境負荷を最小限に抑えるように炭素効率が高く設計・開発・運用されるソフトウェアのことを指します。従来のソフトウェア開発では機能性や使いやすさが重視されてきましたが、グリーンソフトウェアでは炭素排出量が最小限になるように、消費電力の削減やハードウェアの効率的な利用、カーボンアウェアネス(炭素に対する意識)を追求します。具体的には、無駄なコードの削減、効率的なアルゴリズムの採用などの工夫が含まれます。これはソフトウェア領域におけるカーボンニュートラルへの貢献であり、IT全体のグリーン化を推進する重要な一環として注目されています。

ソフトウェア開発について詳しくは「技術革新による組込みソフトウェアの現在と未来」をご覧ください。

 

グリーンソフトウェアが必要な背景

グリーンソフトウェアが注目される背景には、IT業界の急速な成長に伴う環境負荷の増大があります。2030年には世界の消費電力量のうち、IT業界関連の割合は20%を占めるといわれています。生成AIWeb3、メタバースといった新技術の台頭により、今後さらに消費量は増加してしまうでしょう。

また、2020年の保険世界大手独アリアンツの調査によると、IT業界が排出するCO2排出量は世界全体の1.8%~2.8%を占めるとされており、この割合は航空業界に匹敵しています。このままの体制の場合、2030年にはCO2排出量が8.3億トンに達すると予測されています。こうした状況を受け、ソフトウェア開発においても環境負荷を考慮する動きが国際的に広がっており、環境負荷を最小限に抑えられるグリーンソフトウェアが注目されているのです。

参考:Decarbonizing ICT: balancing growth with green solutions and blockchain innovation|アリアンツ保険

 

グリーンソフトウェアに取り組むメリット

グリーンソフトウェアに取り組むことで環境負荷低減に期待できるだけでなく、以下の3つのようなビジネス面でも大きなメリットがあります。

開発の最適化

グリーンソフトウェアの開発アプローチは、結果として開発プロセス自体の効率化をもたらします。リソースを最小限に抑えるためのコード最適化は、不要なコードや冗長なデータの削減につながり、開発の複雑さを軽減します。これにより、エンジニアが書くコード量が減少し、開発期間の短縮や保守性の向上が期待できます。また、効率的なアルゴリズムの採用によりシステムの応答性が向上し、ユーザー体験の改善にもつながります。このように、環境への配慮と開発効率の向上は相反するものではなく、むしろ相乗効果をもたらす関係にあります。

コスト削減

グリーンソフトウェアの導入は、長期的な視点でコスト削減効果をもたらします。ソフトウェアはハードウェアの動作を制御し、そのエネルギー消費に直接影響を与えるため、効率的なソフトウェアの利用はエネルギーコストの削減に直結します。特にクラウドサービスを利用している場合、リソース使用量の最適化によりインフラ費用の削減が可能です。さらに、ハードウェアへの負荷軽減により機器寿命が延長され、設備投資の抑制につながります。ほかにも環境規制対応コストの低減や高い保守性によるメンテナンス費用の削減など、多角的な経済効果をもたらします。

企業価値の向上

グリーンソフトウェアへの取り組みは、企業のサステナビリティ戦略の重要な要素となっています。環境意識の高まりにより、消費者、投資家、従業員といったステークホルダーは企業の環境への姿勢を重視するようになっています。グリーンソフトウェアの開発・導入は、企業が環境問題に真摯に取り組んでいることを示す具体的な証となり、ブランドイメージの向上や投資の呼び込みにつながります。特に企業の環境への取り組みを就職先選定の判断基準としている従業員も少なくなく、優秀な人材の獲得・維持においても有利に働くでしょう。

 

グリーンソフトウェア実現に向けた具体的な取り組み

ではグリーンソフトウェア実現に向けてどのような取り組みを行うべきでしょうか。以下の3つの取り組みがグリーンソフトウェア実現に効果的です。

炭素排出削減のための効率化設計

グリーンソフトウェアでは、エネルギー効率を最大化するソフトウェア設計を行うことで炭素排出量の削減を実現します。具体的にはCPUやメモリの使用量を最適化し、不要なリソースアクセスを減らすことが重要です。リソース効率の良いアルゴリズムやデータ構造を選び、バックグラウンドでの不要なプロセス実行を最小化することで、消費電力を大幅に削減できます。さらにソフトウェアのコンパクト化や余分な機能の削減も、ハードウェアへの負荷を軽減し、機器の寿命延長にもつながります。これらの取り組みは、後述するSCIスコアの改善に直接反映され、組織のネットゼロ戦略の基盤となります。

カーボンアウェアなコンピューティング

カーボンアウェアなコンピュータ使用は電力の炭素強度に応じて動作を変更するため、環境負荷を最小化します。例えば太陽光や風力など再生可能エネルギーの供給が多い時間帯に計算負荷の高い処理をシフトさせることで、同じ計算処理でも排出される炭素量を大幅に削減できます。これは「24時間365日のマッチング目標」の達成に貢献します。この目標は、使用する電力を常に(124時間、年間365日)再生可能エネルギー源から得ることを目指すものです。電力需要を再生可能エネルギーの供給パターンに合わせることで、持続可能なエネルギーシステムへの移行が加速し、炭素排出量の削減につながります。こうした取り組みの積み重ねが、最終的にグリーンソフトウェアの実現を可能にするのです。

測定と可視化によるグリーンソフトウェア実践

グリーンソフトウェアの実現には、炭素排出量の測定と可視化が不可欠です。ソフトウェアのエネルギー消費と炭素排出量を継続的にモニタリングし、改善の効果を定量的に評価することで、効果的な対策を特定できます。後述するソフトウェア炭素強度(SCI)などの指標を活用し、アプリケーションのエネルギー効率、ハードウェア効率、カーボンアウェアネスの向上による排出削減効果を可視化します。これらの測定結果はチーム内で共有し、開発者の意識向上にも役立てます。

こうした測定と改善のサイクルを継続することで、グリーンソフトウェア実現に向けた取り組みの加速や組織文化を醸成することができます。

 

グリーンソフトウェアとGSF

グリーンソフトウェアの普及と実践を推進する中心的な役割を担っているのが、Green Software FoundationGSF)です。GSF2021年に設立された非営利団体で、ソフトウェア業界における環境負荷削減のためのエコシステム構築を目指しています。

主な活動として、グリーンソフトウェアの原則策定や評価指標の確立、ツールの開発などを行っています。特に注目すべきは「Software Carbon IntensitySCI)」という炭素排出量の評価指標を定義し、ソフトウェアの環境負荷を定量的に測定する基盤を整備している点です。さらに、GSFは「Green Software for Practitioners」という無料の教育コースを公開し、グリーンソフトウェアに関する知識の普及に努めています。また、「Green Software Patterns」というオープンソースデータベースを通じて、クラウド、Webなど各分野でのグリーンソフトウェア実現のための具体的なアプローチ方法を共有しています。こうした包括的な取り組みにより、GSFはグローバルなグリーンソフトウェア推進の中核を担う存在となっています。

NTTデータMSEの取り組み

NTTデータグループは、Green Software Foundationの運営メンバーとして積極的に参画し、グリーンソフトウェアの普及と標準化に貢献しています。グループ内の海外拠点も含めた組織横断的な取り組みにより、GSF内のさまざまなプロジェクトを牽引する役割を果たしています。

NTTデータMSEでは、組み込みソフトウェア開発の強みを活かし、「グリーン of IT」と「グリーン by IT」の両面からのアプローチでCO2排出量削減に取り組んでいます。「グリーン of IT」ではエネルギー効率を高めてシステム自体の二酸化炭素排出量を最小化し、「グリーン by IT」では持続可能な環境創出のためにITを活用しています。

ほかにもNTTデータMSEは「グリーンソフトウェア開発支援サービス」を通じて、企業のグリーンソフトウェア実現を支援しています。同社独自の「SCIスコアダッシュボード」を用いることで、製品のソフトウェアの動作状態とSCIを関連付けて見える化し、炭素排出に大きく影響している箇所を特定します。これにより、エネルギー効率、カーボンアウェアネス、ハードウェア効率など総合的な観点から最適な改善策を提案し、ソフトウェアの環境負荷を最小限に抑えることが可能になります。

今後もNTTデータグループの一員として、長年培った組込みソフトウェア開発のノウハウとAIなどの最新技術を融合させ、グリーンソフトウェアを通じたサステナブルな社会の実現に貢献していきます。

詳しくはこちらをご覧ください。

 

グリーンソフトウェア実現で企業価値の向上へ

グリーンソフトウェアは、環境負荷を最小限に抑えたソフトウェアです。地球規模でのCO2排出量削減が求められる中、ITセクターでも環境配慮型の取り組みが注目されています。企業がグリーンソフトウェアに取り組むことで、環境面での貢献だけでなく、開発プロセスの最適化によるコスト削減や企業イメージ向上といった多面的なメリットが得られます。GSF(グリーンソフトウェア基盤)などの業界標準に準拠し、エネルギー効率の高いコード作成や消費電力の可視化を進めることで、持続可能なIT社会の実現と企業価値向上の両立が可能になるのです。

NTTデータMSEではお客様のグリーンソフトウェア実現に向けたサポートも行っていますので、ぜひこの機会にご相談ください。